水琴窟マイスター田村

水琴窟を次世代に継承するために情報を公開し、
マイスターとして、これからも夢のある仕掛けを提案して行きます。

055-987-7534

もっと知りたい

” 作品「雫のように」を見学”

元NPO日本水琴窟フォーラムの会長であった故中野之也氏が見学に訪れました。私の水琴窟を下支えしてくれる良き師匠でもあります。
私の自宅のアプローチ脇に埋設型のデザイン水琴窟を完成させ、珍しさもあってかわざわざ三島に立ち寄っていただきました。
水琴窟といえば日本古来のものということもあり、その意匠は和風の蹲型がほとんどでした。
しかし実際に近代的な建物や施設などに設置するには、従来の和風ではどうなのか? 気を遣い悩むとこでもあります。(☆公共の場所では、壊されたり危険がないことと共に管理が行き届かなかったりもします。)
地下の機能は今までとは変らず、地上の意匠イメージをその場の背景に馴染むデザインに変えていくことも必要と考えます。

*作品の音をご確認ください↓

進化する音へのこだわり

1993年に水琴窟コンサートを始めるようになってから、30回以上の公演をしています。
当初は演奏者のバックにただ水琴窟の音を増幅して流すのみでした。私と水琴窟がステージに上がって、見せるコンサートになったのは途中からのことです。

コンサートでは、ステージ用に作った移動型水琴窟(スペースサウンド)にマイクを直接入れて音を出すため、水琴窟の音は実にリアルです。
ステージにスペースサウンドをセットするときは、毎回その度に滴の落ち具合を、微妙に甕を傾けて調整しています。なぜなら、水滴を3箇所以上から落したいからです。そうすることで音に変化が生まれ、感動的に演奏と融合することが可能なのです。しかし、これが結構時間が掛かって大変。
ところがある日、ハッとひらめいたのです。そんなに大変な思いをしなくても、良い方法が分かったのです。
滴の落ちる表面を、予め3箇所以上にコブ状のものを加工しておけば良いのです。

2002年5月静岡県駿東郡長泉町 如来寺に水琴窟を製作するときのことです。
偶然、何日か前から水琴窟の様子を撮りたいとNHK静岡放送テレビが取材に訪れていました。
水琴窟の作り方を、くまなくカメラ撮りしたいとの事。今まで水琴窟を取材したくても、なかなかその中身を見せたがらない業者達に苦戦し、取材陣も今度こそはと期待していたようです。

  • 過去には様々な甕を試したのだが…

    過去には様々な甕を試したのだが…

  • カメの加工の様子(2002年頃)

    カメの加工の様子(2002年頃)
    この頃は、常滑の素焼きも使っていたのですが…徐々に決定的欠陥が分かってきた!

  • 甕の天井の3箇所以上から滴が落ちるように加工

    甕の天井の6箇所以上から滴が落ちるように加工。これで様々な音階やランダムな‘間’が生み出される。

  • 水門加工作業

    〈水門加工・・水を操る?!この技を磨かねば、癒しの音は完成しない!〉甕は独自に設計企画した強度のある堅焼きもの以外は、使用しなくなった。(2010年以降)

音の良さは、甕(カメ)で決まる!

現状の水琴窟は、その中身の甕(カメ)といえば、たとえば田舎の家の裏庭に転がっている水甕や漬物甕などの古甕を利用して作ることが多く、近年では近隣の外国から輸入された水鉢なども安く出回っているため、それらを使う業者も少なくありません。
私も昔はそんな感じでしたが、いくつもの水琴窟を手掛けるにつれ、より余韻の長いものや、地震で壊れない硬い素材、焼き具合、形状、そして見た目の美しさなども徹底的にイメージを膨らませました。
全国の産地を何年か費やして探し、2006年やっと巡り合えた一人の陶工にお願いして理想の大甕を作ることになったのです。

それから数年後、その陶工が、高齢を理由に引退をしてしまいました。近頃では大物を焼く窯元が希少になり、替わりの陶工を探すのに苦労を強いられるのです。
しかしまた縁あって出会えた陶工に、以前と同じ設計で甕を作らせたのですが、これが前の物にも増して余韻が長く、音も透き通っていたのです。

土質や焼き方が変わっていないのに、なぜこんなに音が違うのか? そのなぞは水門などの加工時に分かった事ですが、陶器の中に、気泡が出てこないのです。要するに、粘土を練る工程で手を抜いていないということです。結果的にそれが余韻の長さに現れるのです。通常の甕の使い道は、水などの液体を入れるものですから、水さえ漏れなければ甕の機能が果たせるのですが、水琴窟で重要なのは音ですから、素材が締まっていなければならないのです。
今度のは丁寧で出来映えも美しい。これは腕のいい、こだわりのある貴重な職人だったのです。

というわけで、私の水琴窟はその時以来、各段にすばらしい音の甕を手に入れたことで、オーナーの方々には、自信を持って自慢が出来る水琴窟の提供を可能にしたのです。

2012.05

新たな水琴窟文化をつくるために

私の本音!

日本の庭は古くから、『遠くにある風景を身近に感じたい』という思いや、更に実用的な物などを次々に取り入れて、少しずつ進歩しながら現代に文化を継承してきました。
例えば、玄関先の目隠しや装飾として使用された袖垣、枯れ山水や、池泉回遊式、蹲(つくばい)、筧(かけい)獅子脅しなども、いわばその時代における独創的な発明品はずです。

水琴窟でも同じことが言えます。しかし、水琴窟は『庭の一部』として登場しますが、他の作品とは少しばかり違った性質を持っているのかも知れません。
視覚と聴覚を研ぎ澄ますことのできる、過去に例のない癒しの仕掛けです。滴を反響させて聴く音というのは実に奥深いものです。
地上部の蹲踞(つくばい)が見えていても、水琴窟は地中からかすかな音を発するだけで姿が見えない、まさに見え隠れする日本独自のわびとさびを演出する神秘的な仕掛です。


  • 蹲踞(つくばい)

    茶室の露地に作り、茶室に招かれる前に口や手を洗い清めるためのもの。

水琴窟は、既存してあった蹲踞(つくばい)や縁先手水鉢(えんさきちょうずばち)を利用して、余った水で音も楽しむという、一石二鳥の発明品です。
しかし作り方や維持が難しいため、発明当時、それが普及したとは考えにくいのです。
ですが情報の行き渡らない時の状況で、日本の各地に作られていたことは事実ですから、当時の庭師が積極的に新しいことを取り入れて伝えようと各地に足を運んで実践したその努力には、本当に頭が下がる思いです。